制作してから年月が経過したWebサイトでは、リニューアルを行うケースもあるかと思います。
メインとする目的は様々でしょうが、その際、検索流入を失いたくないというのはすべてのWeb担当者が持つ共通の思いでしょう。
この記事では、サイトリニューアルを失敗して検索流入を失わないために、リニューアルを行う際のSEO上の注意点をチェック項目ごとにまとめました。
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はじめに
サイトリニューアルの目的は端的に言えば(特にウェブサイトの)将来の売上を向上させるだと思います。そのためには流入を増やすか、最低でも減らさないことが大前提とお考えの方も多いことでしょう。
ところが、大々的にサイトリニューアルを行う場合(いわゆるフルリニューアル)は、サイト内のさまざまな点が変わってしまうため、検索エンジンがリニューアル後も以前と同じ評価をしてくれるとは限りません。
実際、リニューアルでアクセスが下落してしまう失敗例の多くでは、サイト内の多くの要素が変更されています。
この点を考慮すると、評価が落ちてしまうリスクを最小化するためには、フルリニューアルは極力行わず、小さな改善を積み重ねることが基本です。
とはいえ、当社にご相談をいただいた時には、「すでにフルリニューアルが決まってしまっている」」というケースは多いです。
このようなケースでわかるように、初期段階からSEOに詳しい専門家が関与しておらず、SEOにとってリスクの高い決定をしてしまっていることが、リニューアルの失敗につながる遠因になっている側面もあります。
そのため、リニューアルは計画時点で始まっているととらえる必要があります。
少しでも失敗のリスクを軽減するためには、リニューアルを「計画段階」「公開前(開発・制作)段階」「公開後段階」の3フェーズに分けて、各フェーズで必要な対策を取ることが重要です。
この時に注意すべきチェックポイントを以下に説明します。
このチェックポイント項目と併せて、修正を行った点の確認を行うことで、リニューアルでアクセスを減らしてしまうリスクを軽減することが可能です。
上記は、URLはなるべく変更すべきでないというGoogleの公式アナウンスに基づいたものです。
Google検索セントラルが公開している動画をもとに、弊社で解説した動画がありますのでぜひご覧ください。
計画段階の注意点
リニューアルなどのサイト改修は、要件が決まってしまった後では変更が難しい点も多くあります。
そのため、早い段階からSEOも考慮に入れてプロジェクトを進めていく必要があります。
リニューアル計画時からSEOの専門家が関与しているか
まず、リニューアルのプロジェクトチーム内に、SEOに精通したメンバーがいるかどうかを確認することをおすすめします。
リニューアルの大筋の方向性が決まったあとからアサインしても、すでにSEOにとってビハインドを背負うプロジェクトになっている場合もあります。
あとから変更が難しい、SEOにとってマイナスな決定をしてしまうことを防ぐために、あらかじめSEOに詳しいメンバーを加え、プロジェクトに意見を反映させる必要があります。
リニューアルの目的は明確か
リニューアルの動機(きっかけ)は多岐に渡ります。しかし、そのために目的があいまいになっているケースも目にします。
よく伺うリニューアルの動機には以下のようなものがあります。
- デザインが古くなったから
- 機能が古くなったから
- 予算が余っているので消化したい
- サイトが使いづらいから
- 経営上の問題などでデザインやロゴを刷新したいから
SEOと直接の関係があるかどうかにかかわらず、リニューアルの目的はしっかり決めておくべきです。
まず主目的を明確にしたうえで、SEOなど副次的な目標を立てることで、方向性がぶれることなく意思決定することが可能になります。
なお、SEOに関連した目標の例としては以下のようなものが考えられます。
- 検索流入を維持する
- 今後検索流入を上げるために〇〇の改修を行う
- SEOにより適したCMSに変更する
- サイト構造をSEOに適した構造に置き換える
リニューアルの変更点は最低限か
サイトリニューアルの目的に応じて、サイト内の様々な要素が変更される可能性がありますが、リニューアル後の流入数が減少してしまうリスクを考慮すると、変更要素はできる限り少なくする必要があります。
以下はリニューアルで変更対象となる主な要素です。
- ドメイン
- URL
- デザイン
- レイアウト/UI
- コンテンツ
- CMS
- サーバー
たとえばSSL化を行うことはURLの変更にあたり、同時に他の変更を行うことは推奨されていません。
参考:https化における注意点についてのJohn Mueller氏の発言
特に、サイト内の要素のほとんどが変更されるフルリニューアルでは、以前のページとの関連性を評価する際に混乱が生じやすくなり、順位下落リスクが高まります。
流入数の減少リスクが気になるのであればフルリニューアルは避け、次で説明する項目も参照のうえ、複数回に分けて順次改修することがおすすめです。
リニューアル後の施策イメージはあるか
前述のとおり、SEOの観点から言えば、たとえサイト内に改善すべき点が多くあったとしても、1回の改修では大きな変更は避けるのが望ましいです。
そのため、改修は1回では終わらず、段階を踏んで継続的に行う必要があります。
ウェブサイトの流入や成果向上に向けて、リニューアル完了後に行う施策とスケジュールイメージを立てておく必要があります。
たとえばサイトを大きく変更したい場合には、まずはCMSやシステム変更など根本的な変更を行い、それが完了した後時間をおいてからサイト構造やURL構造の変更といったややSEOへの影響が大きな変更を行います。デザイン、UIなど比較的SEOへの影響が小さいものは最後に変更を行いましょう。
SEOに不向きなCMSへの載せ替えを計画していないか
CMSはページの作成や管理を簡単にする一方、CMS側の制約により想定していた設定や変更ができない(またはできても手間がかかりすぎる)という場合もあります。
リニューアル時にCMSを移し替えるケースもあるかと思いますが、そのCMSがSEO上の要求を満たせるかどうかは確認しておく必要があります。
たとえば、カテゴリページを作成できるか、指定したパンくずリストのパスを設定できるか、必要なメタタグが挿入できるかなど、CMSと基本的なSEO要素との相性は必須です。
特にSEOへの依存が強く競争も激しいECなどの業界では、内部SEOによる減点が見込み売上の減少につながるリスクがあります。
ECサイトに必須であるカート機能や商品管理ばかりに着目し、SEOに関する機能がおろそかになっているEC向けCMSも多くありますので、CMSの選定にはSEOの面からも細心の注意が必要です。
公開前(開発・制作)段階の注意点
以下からは公開前の開発・制作段階についてのチェックポイントです。しかし、項目の中には、開発要件が決まってからでは対応できないものもあると思われます。計画段階から項目だけでもチェックしておき、あらかじめ案件化しておくことをおすすめします。
開発プレビューが見られる環境があるか
デザインの変更がある場合、モックアップやデザインカンプなど、イメージがわかるものが作成されるとは思いますが、SEOにおいてはデザインだけでなく、ソースコードに記述されるメタタグや内部リンクやURLなど、デザイン以外にもチェックすべき点が多くあります。
開発要件が達成されているかチェックするためにも、目視チェックが可能になる開発環境を設けることが理想です。
開発環境が用意できる場合は、ベーシック認証やIP制限などにより、関係者外のアクセスをブロックしておきましょう。
ブロックを怠ると、、Googleがクロールしてしまい、検索結果に表示されてしまう場合があります。それ以外にも第三者が閲覧できる状況はトラブルの元となるため、ブロックは忘れないようにしてください。
メンテナンス中の対応計画を立てたか
リニューアル前後の切り替え時が瞬時にできず、サイトを一時的にクローズするケースもあるかと思います。
ユーザーや検索エンジンがコンテンツにアクセスできない間、ステータスコード200や404にてコンテンツを表示できない期間が続いてしまうのは、SEO上好ましくありません。
このような場合、ステータスコード503を返し、メンテナンスのために一時的にコンテンツを表示できないことを伝えることが重要です。
参考:メンテナンス時はステータスコード503を返すのがSEOのベストプラクティス
また、メンテナンスモードが長期に及ぶ場合は、ステータスコード503であってもSEOへの悪影響が高くなりますので、そのような場合は302リダイレクトにて、一時的に旧サイトを他のサイトで表示することも検討しましょう。
また、ユーザー向けにはあらかじめメンテナンス予定時間をしておいたり、Googleなどロボット向けにはRetry-Afterヘッダーを設定しておくことも有効です。
参考:How to deal with planned site downtime – Official Google Webmaster Central Blog
URLの変更を伴う場合、1:1対応で301リダイレクトを設定したか
URLの移転を伴う場合、301リダイレクトの設定は必須です。
これはリニューアルの際に、SEOで最も押さえておくべきポイントで、多くの方は必要性は認識されているかと思いますが、実際には設定漏れなどによりリダイレクトができていなかったために流入が落ちてしまったという例も少なくありません。
移転対象となるすべてのページを網羅して確実にリダイレクトできるようにしておきましょう。
存在するページのピックアップが難しい場合は、検索流入があるページをGoogleアナリティクスで確認する方法もあります。
移転対象となるページがリストアップできたら、それぞれ移転後のURLとの相対表を作成します。
このようなリダイレクト相対表をもとにして、.htaccessなどによりリダイレクトを設定します。
ステータスコードは適切に設定されているか
前述のリダイレクトを含めて、適切なステータスコードの設定は必須です。
主なステータスコードは以下の通りです。
- 200 正しくコンテンツが表示された
- 301 移転済み(リダイレクト)
- 404/410 どちらもページが存在しないことを意味し、410のほうが恒久的という意味合いが強い
- 503 メンテナンスや過負荷により一時的に利用できない
このうち、Googleがインデックスするのは200のページのみです。
トラブルの例としては、「リダイレクトが設定されず移転後に404になってしまう「」コンテンツがあるのに404が返ってしまう」「コンテンツがないのに200が返ってしまう」などが考えられます。
特に、404のステータスコードが設定されていると、インデックスから削除されてしまいますので、検索結果に表示したいページにはステータスコード200が設定されているかを確認することが必要です。
サーチコンソールの移転を行ったか
ドメインの変更を伴う場合、サーチコンソールのアドレス変更ツールにて、Googleに移行を知らせることが推奨されています。
なお、このツールはドメイン変更時に使用するもので、以下の場合は不要です。
- SSL化(http→https)
- 同じドメイン内でのパスだけの移転
- 同じドメイン内でwwwとwww以外の間での移転
ただし、アドレス変更ツールの使用には移転後のサーチコンソールプロパティの所有権も必要であるため、所有権の確認方法によっては、リニューアル後に行わざるをえない場合もあります。
なお、ドメインはそのままでURLが変更される場合、ディレクトリで区切ったプロパティがあると、そのディレクトリ内での分析が容易になることがありますので、必要に応じて検討するとよいかと思います。
robots.txtの設定に問題はないか
URLの変更を伴わないリニューアルでは、robots.txtも変更する必要はありませんが、URLの変更があるのであれば、意図しないページのブロックやブロック漏れが起きていないかを確認します。
また、サーバーの変更を行った場合にはrobots.txtが問題なく移行されているかどうかを確認しておく必要があります。
各種メタタグは適切か
以下のような目視チェックではわからず、ソースコードを確認する必要があるメタタグ等は、インデックスなどに大きな影響を与えるものがあるため特に注意しておく必要があります。
- noindex
- canonical
- モバイル向けのalternate
- hreflang
- 構造化データ
特に、noindexを付与したまま公開されているページはたびたび見られるため、メタタグ周りのチェックは細心の注意を払います。
XMLサイトマップは適切か
URLの変更があった場合、XMLサイトマップも更新する必要があります。
使われなくなったURL(301や404を設定したURL)はサイトマップから削除し、新URLのみを記載しておきます。
使われなくなったURLをそのまま記載しておくと、Googleが正規URLを適切に選べなかったり、クロールバジェットにとって悪影響を及ぼす可能性があります。
内部リンクのURLは適切か
URLの変更があった場合、内部リンクURLも変更します。
旧URLにリンクしていて、新URLにリダイレクトされる場合であっても、直接新URLへのリンクに変更することをおすすめします。
これはXMLサイトマップの場合と同様に、Googleが正規URLを適切に選べなかったり、クロールバジェットにとって悪影響を及ぼす可能性があるためです。
また、アクセス解析目的で内部リンクに不要パラメータをつけるなどを行い、非正規なページにリンクすることは避けるべきです。
これも正規URLの選択やクロールバジェットにとって悪影響があります。
タイトル設定は適切か
タイトル変更を行う場合は意図したタイトルに設定しているか確認しましょう。また、タイトル変更を行わない場合であっても、CMSのテンプレート変更などによりすべてのタイトルが意図せず変更されてしまう場合があるため、そのような設定になっていないかを確認します。
重要なコンテンツを減らしすぎていないか
アクセスが多かったページを削除してしたり、一部コンテンツを削除するといった改修はキーワード順位やアクセスに大きな影響があるため、可能な限り避けるべきです。
どうしても削らなければならない事情がある場合には、代わりのコンテンツによってそのキーワードの対策ができないかどうかを検討してみてください。
重要な内部リンクを減らしすぎていないか
レイアウトや共通ナビゲーションの変更・削除などにより、トップページのような重要なページへの内部リンクが失われてしまうと、ユーザビリティやSEO順位が低下してしまうおそれがあります。
特に基本となるレイアウトについては見栄えの良さだけでなく、内部リンクが維持されているかどうか、ユーザビリティがそこなわれていないかといった観点からもチェックするようにしましょう。
モバイル対応されているか
リニューアルを行うサイトが古く、モバイル対応がされていなかった場合は、モバイル対応によりスマートフォンからでも快適に閲覧できるようにしておくのがおすすめです。
モバイル対応にはレスポンシブデザイン、動的な配信。PCとモバイルを別々のURLにするといった3つの方法がありますが、リニューアルで新たにモバイル対応をする場合はレスポンシブデザインをおすすめします。
理由は、PCもモバイルも同じURL、同じHTMLでコンテンツを閲覧することができるため、Googleにとっても最も混乱の少ない配信方法であると考えられているためです。
モバイル対応は特に、計画段階から要件に入れていないと、対応が難しい場合が多くあります。早い段階から検討することをおすすめいたします。
アナリティクスコードは設置されているか
Googleアナリティクスは設置されていなかったとしてもSEO上の問題があるわけではありませんが、リニューアルによってコードが抜け落ちていないかは確認しておきましょう。
公開後のチェック体制を整えたか
リニューアル公開時には何かしらのミスがつきものです。なるべく早期に発見・解消できるよう、公開後のチェックも入念に行いましょう。
チェック・修正・修正反映などあらかじめ必要な体制を整えておくことが重要です。
公開後段階の注意点
公開後はGoogleのクローラーもアクセスできる状態になっていますが、何かミスがあったまま実装してしまっても、速やかに対処することで被害を最小限に抑えることができます。
開発時チェックしたポイントの再チェック
開発環境などで、気づいた問題点を指摘したとしても、なんらかの原因で反映されていなかったり、修正したはずの箇所が巻き戻って本番に実装されてしまう場合もあります。
二度手間にはなりますが、誤設定によるダメージが特に大きいnoindexなどのメタタグを中心に、再度確認しておきましょう。
ウェブサイトへのアクセスがあるか
リニューアル直後にGoogleアナリティクスのリアルタイムアクセスを見ることで、検索エンジンをはじめとした各流入チャネルからのアクセスがあるかどうかを確認します。
もしアクセスが全く見られない場合、アナリティクスコードが適切に設定されているかの確認が必要です。
順位が下落していないか
キーワード順位はすぐに動くわけではありませんので、継続的に調査していく必要がある項目です。
リニューアル前からウォッチしていた順位を中心に、順位を維持できているかどうかのチェックを行いましょう
上位表示していて多くの流入を生んでいるキーワードであればサーチコンソールのパフォーマンスレポートでのチェックができますが、上位表示していないのであれば別途順位計測ツールなどで測定する必要があります。
その他エラーが起きていないか
インデックスエラーなどサーチコンソール上で、各種エラーが増えていないかを確認します。
こちらもレポートされるまでに時間がかかるため、継続的・定期的に調査していく必要があります。
まとめ
リニューアルにおけるSEOのベストプラクティスは、変更点をなるべく小さくして一度に大きく変えすぎないことです。
特に、リニューアル前のサイトが獲得していた検索流入が大きいほど、リニューアルによるSEO上のリスクも高まります。
そのため、リニューアルの目標の1つは、アクセス数を落とさずに次の改修につなげて成果を向上させることです。
とはいえ、フルリニューアルがすでに決まってしまい、大きな改修をせざるを得ない場合もあることかと思います。
そのような場合には、早めにSEOの専門家をプロジェクトに参加させ、リスクの大きな改修を別フェーズに切り分けたり、リスクのより小さな代替手段に変更するなど、SEO上の影響が少ない計画を立てて進めることで、失敗のリスクを軽減することができます。